石器・土器・貝塚・城跡など、なんらかの文化財が埋まっている可能性が高いとして周知されている土地のことを文化財保護法上、「周知の埋蔵文化財包蔵地」といいます。
周知といっても、私たちが普通に生活していて気にかけることはあまりないと思いますが、各都道府県・市区町村のHPにアクセスすれば、概ねどのエリアが埋蔵文化財包蔵地なのかがわかります。
【参考】東京都と埼玉県の埋蔵文化財包蔵地公開ページ↓↓
例えば東京では、千代田区、中央区、港区、文京区といった都心エリアの広範囲が江戸遺跡として指定されています。他にも、古くから人が暮らしていたと考えられる武蔵野台地では、旧石器時代や縄文時代の遺跡が点在しています。武蔵野台地とは、簡単に言うと京浜東北線よりも西側、荒川よりも南側、そして多摩川よりも北側のエリアのことです。埼玉県の川越市や所沢市も含まれます。台地の川沿いなど、昔から人が暮らしていた場所は遺跡がよく見つかるのです。ちなみに、文化庁によると周知の埋蔵文化財包蔵地は全国で46万か所あるそうです。
文化財保護法では、埋蔵文化財包蔵地内で土木工事を行う場合には、工事着手の60日前までに届出を行わなくてはならないとされています。届出の結果、行政(教育委員会)が試掘を行います、あるいは慎重に工事してください、などといった回答が出されることになります。
市区町村によって詳細が異なる場合がありますが、一般的には次のようなフローになります。
このフローで「工事可」まで到達しないと、家を建築することができません。届出の回答が慎重工事や立会調査の場合は、概ねそのまま工事を始めることができます。回答が要試掘だった場合、市区町村の教育委員会が試掘を実施することになり、建築が可能になるまで数か月~1年以上を要してしまう場合もあります。加えて、埋蔵文化財を保護する形での工事を求められることがあり、予定していた工事計画を見直さなくてはならない可能性もあります。
極めて貴重な文化財や遺跡が発掘された場合は、最終的に工事不可となる可能性もありえますが、これは非常に稀なことだと言えます。
ちなみに試掘の費用については、個人の住宅を建築する場合は公費で負担されることが多いです。
また、発掘された文化財は国民共有の財産とされ、その土地の所有者の所有物にはなりませんが、その価値に応じて報償金を受け取れることがあるようです。
住宅ローンを利用して埋蔵文化財包蔵地に該当する土地を購入する場合、まず次のことを確認することが肝要です。
☆土地の引渡しまでに上記フローの「工事可」まで到達できるかどうか?
土地の引渡しの前までに届出を行い、「慎重工事」などの回答を得られれば、ひとまずは安心して土地の引渡しを受けることができます。
しかしそうではなく、土地の引渡しを受けた後に届出や試掘を行う場合は、いつ工事に着手できるか定かではない土地の引渡しを受けるということになってしまいます。
住宅ローンを利用して「工事可」まで到達していない土地を購入する場合、次のようなリスクが考えられます。
①銀行の担保評価にマイナスの影響を与える可能性がある。
②試掘期間中であっても、土地分のローンの返済は始まる。
③元金据え置き(土地引渡しから建物の完成までの期間、金利のみを支払うことで月々の返済額を抑えること。)の期間が長くなると、その分支払う金利が増える。
④ほとんどの銀行において、土地の購入から建物の完成まで1年以内に完了させなくてはならない。超える場合は銀行に要相談。
⑤想定していたスケジュールで建物が完成しない。
⑥文化財保護のため、計画していた工事ができない場合がある。
⑦万が一建築ができない事態に陥った場合、土地の価格が大きく下がる。
⑧住宅用地の特例で軽減されていない税率の固定資産税がかかる場合がある。
こういった具体的なリスク・コストを予め理解した上で慎重に判断する必要があります。
リスクヘッジのためは、土地の契約に、試掘の結果が出るまで引渡しを延期できる特約や、家を建築するという目的が達せられないとなったときに無条件で解約できる特約などを盛り込むことが望ましいでしょう。
土地の仲介を行う不動産業者に相談し、慎重に進めましょう。
本記事では埋蔵文化財包蔵地とは何か、それから家を建てる場合のフロー、そして住宅ローンを利用する場合の注意点についてご紹介しました。
埋蔵文化財包蔵地は、はるか昔からそこに人が住んでいた事実の裏付けでもあり、土地のことだけを考えれば家を建てるのには適した土地かもしれません。しかし、文化財保護の観点から法的な手続きが必要で、結果として思い描いていた通りに家が建てられないケースがあります。
具体的なリスクについてよく理解した上で、土地の購入や建築を検討するようにしましょう。
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