
住宅ローンを組む上で、今や誰もが加入する「団体信用生命保険(団信)」。万が一の際にローン残高がゼロになるこの保険は、まさに家族を守る「命綱」です。
しかし、近年この団信の保障内容、特に「がん保障」を巡る競争が激化しています。金利の上乗せだけで判断すると、思わぬ落とし穴にはまることも。
本記事では、2025年の最新情報を基に、後悔しない団信選び、特に「がん保障」で比較検討する際の重要ポイントを徹底解説します。
団信とは、住宅ローン契約者に万が一の事態(死亡・所定の高度障害状態)が起きた際に、保険金で住宅ローン残高が完済される保険です。保険金の受取人は金融機関となり、残された家族は返済負担から解放されます。
この仕組みにより、家族は住み慣れた家を手放すリスクを回避できます。そのため、ほとんどの民間金融機関では団信への加入を融資の必須条件としています。
注意点:「高度障害」の厳しい現実
基本的な団信(一般団信)は「死亡」と「高度障害」を保障しますが、この「高度障害」の認定基準は非常に厳しいのが実情です。
【高度障害状態事例】
・両眼の視力を永久に失う
・言語または咀嚼(そしゃく)の機能を永久に失う
・終身常に介護が必要な状態
例えば、病気で半身麻痺になったり、生涯にわたる人工透析が必要になったりしても、一般団信の保障対象外となるケースは少なくありません。この「保障の空白地帯」を埋めるのが、次にご紹介する「特約」です。
近年、特にネット銀行を中心に、団信の保障内容で差別化を図る競争が激化しています。
金利に一定率を上乗せすることで、保障範囲を大幅に広げることが可能になっています。
主な特約の種類
・3大疾病保障: がん、急性心筋梗塞、脳卒中
・8大(11大)疾病保障: 3大疾病に加え、高血圧、糖尿病などの生活習慣病
・介護保障: 所定の要介護状態(例:要介護2以上)
これらの特約は、病名だけでなく「どのような状態になったら保険金が支払われるか」という支払条件が金融機関ごとに大きく異なります。
【2025年版】主要銀行の疾病保障付き団信プラン比較
特に特徴のある銀行の団信プランを比較します。各行の戦略の違いが一目瞭然です。
銀行 |
auじぶん銀行 |
住信SBIネット銀行 |
りそな銀行 埼玉りそな銀行 |
三菱UFJ銀行 |
団信名称 |
がん100%保障団信プレミアム |
スゴ団信(3大疾病100%プラン) |
団信革命 |
7大疾病保障付住宅ローン |
金利上乗せ ※1 |
あり |
あり |
あり |
あり |
加入可能年齢 |
満50歳(51歳誕生日の前日まで) |
50歳以下と50歳超で内容が変わる。 |
満50歳未満 |
満50歳未満 |
保障範囲の概要 ※2 |
・がん100% ・4大疾病 ・長期入院 |
・3大疾病50%保障 ・全疾病保障(医師指示による自宅療養も対象) |
・3大疾病 ・病気、けが16の状態 ・所定の要介護 |
・7大疾病(3大疾病+4生活習慣病) |
ローン残高保障の条件 ※2 |
がん:診断確定 脳卒中/心筋梗塞:60日以上の労働制限 |
4疾病:60日以上所定の状態が継続 |
がん:診断確定 脳卒中/心筋梗塞:60日以上の状態継続 病気・けが:所定の状態に該当、不慮の事故で180日以内に所定の状態に該当
|
がん:診断確定 脳卒中/心筋梗塞:60日以上の状態継続 または所定の手術 その他: 就業障害が30日を超えて継続 |
一時金の有無 |
あり がん診断:100万円 上皮内がん:50万円 入院:10万円 |
一部あり 特定疾病外の就業不能12か月継続で見舞金30万円の場合あり |
なし |
一部あり 総合先進医療特約の一部として10万円 |
月次返済保障 |
あり(長期入院時) |
あり(就業不能時) |
なし |
あり(7大疾病による就業障害時、最長1年) |
先進医療特約 |
あり |
あり(1000万円まで) |
- |
あり(自動付帯) |
ペアローン対応 |
あり(連生団信)1人の該当でペアのローン残高0円 |
[フラット利用] あり(デュエット) |
あり |
なし |
主な免責事項※3 |
自殺、不実告知、精神障害 |
自殺、不実告知、精神障害 |
自殺、不実告知 |
自殺、不実告知、精神障害 |
特徴 |
ペアローン連生団信 |
50歳超にも優しい |
独自の16の病気・けがによる状態の保障 |
保険料支払型プランあり |
※1 上乗せされる金利は、金融機関と提携する不動産会社によって異なることがあります。
※2 保障の範囲・条件の詳細は、各金融機関のホームページ等をご確認下さい。
※3 この表示は免責事項の一部です。詳細は、各金融機関のホームページ等をご確認下さい。
日本人の2人に1人が罹患すると言われる「がん」。がん治療による休職や離職のリスクに備える「がん団信」は、極めて重要な選択肢です。
ポイント1:保障のトリガーは「診断確定」か?
これが最も重要なポイントです。
最も優れたがん団信は、医師によって「がんと診断確定された時点」で保障が発動します。 商品によっては「手術」や「長期間の就労不能」が条件の場合もあり、すぐに保障が受けられない可能性があります。精神的・経済的に最も不安定な時期にすぐ保障される「診断確定」タイプは、大きなメリットがあります。
ポイント2:免責期間と対象外のがん
・免責期間: 通常、保障開始から90日間はこの期間中にがんと診断されても保障されません。
・対象外のがん: 「上皮内がん」や「皮膚がん(悪性黒色腫を除く)」は100%保障の対象外となることが多いです。
ポイント3:コストパフォーマンス
100%保障のがん団信の金利上乗せは年+0.05%~+0.2%が相場です。
例えば3,000万円の35年ローンで年+0.1%上乗せなら、月々の負担増は約1,500円程度。同等の保障を民間の保険で得ようとすると、団信のほうが割安なケースが多くあります。 例えば、auじぶん銀行が提供する団信を検討する場合、「無料のがん50%保障」で十分か、コストをかけて「100%保障」にすべきかなど、家計や家族構成を元に自身にあったものを慎重に判断する必要があります。
【もうワンポイント:団信を検討する上での注意点】
団体信用生命保険は、住宅ローンの返済と連動しているため、返済が進むにつれて保障額(ローン残高)が減少していきます。そして、住宅ローンを完済すると保障も終了します。この点を理解した上で、必要な保障内容を検討することが重要です。
ポイント4:ペアローン対応
団信がペアローン対応だと、2人のうち1人に万が一のことがあったとき、2人分のローン残高がゼロになります。
最近、不動産の価格が高騰していることもあり、ペアローンを組む方が増えています。ペアローン対応の団信であれば安心感も高まります。
団信は生命保険のため、加入には健康状態の審査が必要です。
「告知義務違反」の重大リスク
ローン本審査の際に、過去の病歴や治療歴などを「告知書」で申告します。ここで事実と異なる内容を伝えると「告知義務違反」となり、いざという時に保険金が支払われず、契約が解除される最悪の事態を招きます。必ず事実を正確に告知してください。
健康に不安があるなら「団信の事前審査」を活用
通常、団信審査は物件の売買契約後に行われます。もしここで審査に落ちると、ローン特約で契約は白紙に戻せますが、それまでの時間と労力が無駄になります。 このリスクを避けるため、ローン事前審査と同時に団信の審査も行える金融機関を選びましょう。 健康状態に不安がある方にとって、これは非常に重要な選択肢です。
最後の砦「ワイド団信」
高血圧や糖尿病などの持病が理由で一般団信の審査に通らない方向けに、引受基準を緩和した「ワイド団信」があります。金利は年+0.3%程度上乗せされますが、マイホームを諦めないための選択肢となります。
【フラット35】は、公的な役割から団信への加入が必須ではなく任意です。
健康上の理由で民間団信に加入できない方でも住宅ローンを組める道が開かれます。
団信に加入しないメリット・デメリット
・メリット: 団信に加入しない場合、保険料相当分として借入金利が年0.2%引き下げられます。
・デメリット: 万が一の際の保障が全くなく、ローン返済義務がそのまま家族に引き継がれるというリスクを負います。
団信の代わりに「収入保障保険」で備える
団信に加入しない場合は、同等以上の保障を別途用意することが絶対条件です。その代表格が「収入保障保険」です。
比較項目 |
団体信用生命保険 |
収入保障保険 |
保障の目的 |
住宅ローンの完済 |
遺族の生活費保障 |
保険金額 |
ローン残高に応じて変動 |
契約時に設定 |
保険料 |
年齢・性別で変動しない |
年齢・性別・健康状態等で変動 |
税金 |
保険金は非課税 |
受取保険金は課税対象 |
若く健康な方であれば、収入保障保険のほうが割安になる可能性があります。
一方で、年齢が高い方や健康に不安がある方は、保険料が一定の団信のほうが有利な場合が多いでしょう。
住宅ローンを選ぶ際は、金利だけでなく、団信の保障内容も合わせて、総合的に判断することが重要です!!
保障内容 |
がんや生活習慣病までカバーする多様な商品があるか。 |
がん団信 |
「診断確定」で保障されるか。金利は何%上乗せか。 |
審査 |
健康不安があるときの「事前審査」、「ワイド団信」があるか。 |
フラット |
団信に加入しないなら、収入保障保険などで備えを。 |
「最高の団信」は、すべての人に共通するものではありません。ご自身の健康状態、家族構成、そして「どこまでの安心を求めるか」という価値観によって答えは変わります。
複雑な選択だからこそ、専門家の知見を活用することも有効です。30年以上にわたる長い住宅ローンとの付き合いを安心なものにするため、この記事を参考に、最適なプランをじっくりと見つけてください。
最後にポラスのコンシェルジュでは、長年にわたり培った住宅ローンの知識により、あなたにとって最適な住宅ローンの提案を行っています。
さらにポラスの提携ローンを利用することで、先に紹介した団信の金利上乗せ率を縮小できることがあります。
住宅ローンでお悩みの方は、ぜひとも以下よりお問い合わせください。
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