近年、資材や燃料費の高騰、職人不足、円安などを要因として、住宅価格の高騰が続いています。
東京カンテイが2024年12月9日に発表した市況レポートを見ると、首都圏の2024年11月の新築一戸建の平均価格は4,562万円で前年同月2%の上昇になります。
そのような中で比較的価格が安く売りに出されている市街化調整区域の物件についてのお問い合わせが増えております。
ポラスのローンコンシェルジュでも「市街化調整区域でも住宅ローンはおりるのか」という質問を受けることがあります。
今回は市街化調整区域にある物件で住宅ローンを組むときのポイントについて解説していきます。
【目次】
1.市街化調整区域の許可について
1-1.許可の種類
1-2.物件種別による違い
1-2-1.新築住宅
1-2-2.土地
1-2-3.中古住宅
2.属人要件
3.農地法許可
4.担保評価・流通性
5.住宅ローンを組むことができるのか
まとめ
1-1.許可の種類
市街化調整区域では、主に次の許可が必要になります。
・市街化調整区域で建築するための都市計画法(都計法)の許可
・建築基準法の許可
市街化調整区域は、無秩序な開発を防止する目的で建物の建築が抑制されている区域であるため、建築行為を行うときは都市計画法の許可が必要になります。
都市計画法の許可は主に次のものになります。
第29条 |
土地の区画形質の変更、造成工事等を伴う建築行為を行うとき、造成工事に着手する前に必要になる許可 |
第43条 |
土地の区画形質の変更、造成工事等を伴わず、建築行為のみを行うとき、建築行為を行う前に必要になる許可 |
第42条 |
第29条の許可を取得したのち、許可を受けた範囲を超えて、又は変更して建築を行うとき、建築行為を行う前に必要なる許可 |
その他 |
上記以外の許可(第41条許可等) |
※ただし、上記許可を取得することなく、適合証明書(都市計画法施行規則第60条書面)を取得して建築する場合もあります。
上記「造成工事等」は、都市計画法では土地の「区画」「形」「質」の変更と定義されています。
1-1-1.「区画の変更」とは
住宅の敷地等において、「物理的な利用状況」と「独立して区切られた土地」の範囲を勘案して判断されます。この範囲が変更されることを「区画の変更」といいます。
例:区画の変更
1-1-2.「形の変更」とは
切土・盛土等の造成工事が行われることです。新たに道路が敷設される場合もこれに含まれます。
1-1-3.「質の変更」とは
土地の利用形態上の性質(宅地、農地、山林、道路等)が変更されることをいいます。「農地」から「宅地」に変更する場合などがこれにあたります。
1-2. 物件種別による違い
市街化調整区域の物件購入を考えるにあたって、物件種別ごとに注意しなければならないポイントが異なります。
1-2-1. 新築住宅
新築住宅の購入 |
市街化調整区域の新築住宅を購入する場合、都市計画法の許可、建築基準法の許可のいずれも取得していることを確認する必要があります。 ただし、免許を受けた宅建業者が売主の物件を購入するのであれば、販売前にしっかりどちらの許可も取得しているはずなのであまり心配する必要はありませんが、ここでいう新築住宅とは、建売住宅のことを指します。 建売住宅に似ている言葉で売建住宅というものもあります。売建住宅は、次に解説する「新築住宅の建築」にあたりますので、注意が必要です。 |
1-2-2.土地
土地を購入して、もしくは譲渡を受け、または賃貸借・使用貸借で土地を使用する権利を得て建築する場合、前述した新築住宅の建築ができる要件と許可を確認する必要があります。 |
1-2-3.中古住宅
聞きなれない言葉ですが、市街化調整区域の建築の許可を調べるにあたって、必ず確認しなければならないのが、この「属人要件」です。属人性ともいいます。
属人性のある要件で建築された建物は、その許可を受けた者だけが利用することができます。
許可を受けた者以外が売買等で譲渡を受けて、建物を利用する場合、属人要件を外すための許可が必要になりますが、その許可は必ずしもおりるものではありません。
場合によっては、すでに属人要件の意味で違法性のある建物であることもあります。(例:現所有者が属人要件を外さずに売買等で譲渡を受けて居住している場合等)
金融機関の担保評価にも影響がでますので注意が必要です。
市街化調整区域の不動産、主に土地は、登記簿上の地目が「田」「畑」であることがあります。
この場合、所有権等を移転する前に農地法の許可を受ける必要があります。
市街化区域の場合、農地法は許可ではなく届出で足りるのですが、市街化調整区域になるとそのような例外的な措置は認められず、必ず許可を取得しなければなりません。
この許可を受けるにあたっても、土地の面積要件や、農業台帳に記載のある権利者の問題があり、一筋縄ではいかないことがあります。
さらに農業振興区域の農用地(農業の振興を図るための区域)に指定されている場合、除外申請という非常にハードルの高い許可を受ける必要があり、この許可を受けるために数年を要することもあります。費用も時間もかかるので、土地の購入価格は安くても、却って高くついてしまうこともありますので、注意が必要です。
市街化調整区域の土地は流通性が低く、担保評価も低くなる傾向にあります。
担保評価とは、金融機関が住宅ローン等の融資を行うにあたり、不動産の担保としての価値がいくらあるのか評価をすることをいいます。
金融機関は、融資を実行するにあたり、不動産に抵当権を付けて、融資に滞りが生じたときに抵当権を行使して不動産を競売(けいばい)にかけて、融資金額の回収を行います。そのため、担保評価については慎重に判断を行います。
市街化調整区域は、流通性の問題からも担保評価が低くなってしまうことに注意が必要です。
市街化調整区域だからといって、直ちに住宅ローンを融資しないという金融機関は少ないようです。
住宅ローンの融資上限金額は、主に
①合法性
②属人要件
③担保評価
が勘案され決定されます。
①合法性
合法的な不動産であることは必須の要件になります。 非合法、違法性のある不動産に対して融資を行う金融機関はまずないといってよいでしょう。 |
②属人要件
合法的な建物でも属人要件がつく許可の場合、金融機関に融資を拒まれることがあります。それは属人要件がつく建物は、第三者への売却がしづらく、競売によって融資資金を回収できないリスクが生じるからです。 このあたりは、金融機関によって考え方も異なるため、まずはしっかり属人要件の確認を行い、金融機関に具体的にあたってみるしかないでしょう。 |
③担保評価
これも金融機関によって異なりますが、融資上限価格が抑えられてしまうことがあります。 |
市街化調整区域の物件は、価格が割安で一見して魅力的に映ることがありますが、調査をしてみると様々な問題を抱えていることがあります。
しかし、問題を明らかにして、ひとつずつ解決していくことができれば、住宅ローンを組んで割安に購入できます。
そのためには「合法性」「属人要件」「担保評価」のポイントを理解したうえで、最後は信用のおける、プロの不動産会社、建築会社に頼るべきでしょう。
ポラスグループは今年で創業56年を迎え、市街化調整区域を含めて多くの取引実績があります。
提携金融機関も21行あり、お客様の希望や物件の特性に合わせた最適な金融機関を紹介することもできますので、気になることがありましたら、ぜひともお問い合わせページより、ご相談ください。
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