振れ隅による屋根プレカット

斜線制限が厳しい条件下における
太陽光パネル敷設に適した屋根工法

株式会社中央住宅・マインドスクェア事業部
ポラテック株式会社・プレカット構造設計本部

プロデューサー:ポラテック株式会社 中内 晃次郎、株式会社中央住宅 品川 典久
ディレクター:株式会社中央住宅 成瀬 進、ポラテック株式会社 西村 秀樹
デザイナー:株式会社中央住宅 鈴木 征道、宮田 享弥、沖村 英昂、武田 歩、富谷 渉、近藤 みのり、上條 響、ポラテック株式会社 藤松 良

構造・意匠的に
質の高い屋根形状を創出し、
プレカットによる生産性向上と技術補完

概要

「振れ隅(ふれずみ)」とは、屋根の隅木(すみぎ)が通常の45度ではなく、異なる角度で構成される特殊な屋根構造を指します。主に、建物に異なる勾配(角度)の屋根が組み合わさる際に生じるもので、日本の伝統的な木造建築において古くから用いられてきました。その実現には、高度な墨付けや木材の加工技術が必要とされ、高い精度と熟練した技が求められます。

木造住宅や量産住宅の設計においては、この振れ隅の難易度の高さから、これまで敬遠されてきた経緯もあります。そうした中で、古き伝統技術と現代の最新設備が互いに融合し、新たな価値を生み出すことに大きな可能性を感じます。

斜線制限が厳しい条件下における、太陽光パネル敷設に適した屋根工法

特徴
太陽光パネルの敷設の増加による発電効率の向上
プレカット技術の導入により、建築現場における生産性と品質を確保
振れ隅により屋根角度が抑えられ、効率的な太陽光パネル設置が実現
振れ隅を使用することで屋根の体積が減り、
構造材・外装材の削減へつながる
背景
脱炭素社会の実現に向け、住宅業界では太陽光パネル搭載が普及の一途を辿っている。しかしながら、良好な住環境のための斜線制限が障壁となり、効率的なパネル配置や十分な敷設面積の確保が難しいという課題がある。特に、2025年4月からの東京都における新築住宅への太陽光発電設備設置義務化を迎え、この課題解決は喫緊のものとなっている。都市部の既存住宅地に目を移すと、建蔽率いっぱいに建てられた住宅が乱立し、斜線制限への対応から複雑な屋根形状や、非効率なパネル設置が見られる。このような状況は、必ずしも効率的で美しい街並とは言えない。この現状に対し、木造住宅のポテンシャルを最大限に引き出す設計に取り組むことで、構造的、意匠的に質の高い屋根形状を創出し、プレカットによる生産性向上と職人の技術補完という相乗効果を引き出せるよう取り組んだ。
デザインのポイント
1.緩勾配の屋根が連なり、調和のとれたルーフスケープ(屋根並み)による空のひろがりを演出。
2.屋根勾配により太陽光パネルを見えにくくすることで、景観のよい街並を創出。
3.南面の屋根面積を広げ、太陽光パネルの南面敷設の増加を実現。
経緯とその成果
【街づくり】振れ隅屋根が生み出す低重心のフォルムは、住宅の外観に洗練された印象を与えるとともに、ミニマルでありながらも高いデザイン性を持ち合わせている。周囲の建物と調和しながらも個性を主張し、統一感のある美しい街並を形成する。

【環境性能】振れ隅屋根の構造は、太陽光パネルを効率的に配置するのに適しており、日射角度を最大限に生かした設計が可能である。その結果、1棟あたりの発電効率が高まり、年間を通じて多くの電力を生み出すことで、CO₂排出の大幅な削減につながる。

【生産性の向上】振れ隅のプレカット化により、現場での工事時間が大幅に短縮され、作業効率が向上する。慢性的な課題である建設現場の人手不足や技術者不足の解消にも寄与し、持続可能な建築生産体制の構築に貢献する。
審査員評価
これまで寄棟屋根の折れ線は、プレカット加工の場合、直角を等分した45度とする他、選択肢がなかったが、これを45度以外の振れ角を可能とすることで、偏った南垂れ面を増やす等、太陽光発電パネルの効率的な設置を可能とした。再エネ率を高める構法アプローチからの工夫であり、環境貢献効果も大きく、高く評価した。