住人の交流を育む森の小路「ステイパス」

『ステイパス』のある風景

中央グリーン開発株式会社

プロデューサー:戒能 隆洋
ディレクター:小林 亮一
デザイナー:諸橋 健二、鎌田 浩之、望月 剛、吉田 亮、相内 さやか、小倉 隆、杉山 秀明、萩原 誠

集う、憩う、触れ合う、遊ぶ、学ぶ。
森の小路『ステイパス』のある
コミュニティ

概要

流山おおたかの森の風景と調和する小路を街区の中央に配置。単に通行するだけの小路(=フットパス)ではなく、住民の交流を育む溜まり場(=ステイパス)となる工夫を盛り込み、緑が連続する心地よい住環境を創出しました。

四季折々の植栽を随所に配して景観をつくるとともに、ステイパスが交わる角を中心にコミュニティが育めるベンチを設置しました。緑を眺め、花に触れ、住民間の交流が自然と生まれる空間を醸成しました。
また、ウッドデッキ、開口部、玄関アプローチ等をステイパスに面して配置することでウチとソトが自然とつながり、日常の中で気軽に交流が育まれやすいデザインとしました。

連続する緑とコミュニティベンチ

特徴
建物の脇や裏にあたる敷地を利用したステイパスの創出
デッキや縁側を介して住民が自然に触れ合える
柔らかな光が彩る光の小路
美しい景観を維持するためのサスティナブルな植栽管理システム
課題と背景
本物件は、流山おおたかの森駅周辺の区画整理地内に位置し、3方を道路に囲まれた15邸の分譲地である。一般的な配棟計画では、各建物が道路に向いてアプローチをとり、建物同士が背を向け、コミュニティが生まれにくかった。また2台分のカースペースの確保により、子どもが遊ぶ空間や連続した緑地帯がつくれず、景観づくりにも課題が残った。近年はこれらの対策として地役権を設定したフットパスの採用がみられ、その取り組みが分譲地に付加価値を付けている。本物件ではフットパスの在り方を見つめ直し、そこに滞在する新形態の「ステイパス」を創出した。
ステイパスの創出
全住戸が0.7mずつ敷地を供出し合い地役権を設定。建物の脇や裏にあたる敷地を利用して、東西南北に走る緑豊かな3本のステイパスを創出。歩車分離の安全安心なアプローチと、いざというときは2方向避難も可能な空間に。ステイパスは、場所によって石と木の異なるデザインが施されている。自然を感じるとともに視覚的に景観の変化が楽しめるデザインとした。また、明暗センサーを採用し、暗くなると自動点灯する街灯を設置。温かな光をステイパスに集約し、美しい街並み景観と防犯性の向上も期待できる。
サステイナブルな植栽管理システム
引渡し後3年間。植栽剪定等の定期メンテナンスを当社が実施。子世代へ街の景観を引き継ぐため、住民を対象とした植栽剪定のワークショップを開催し、将来的に入居者主体の運営へと導いていく。
審査員評価
住宅が個々の敷地の中で閉じてしまうのではなく、むしろ隣家と積極的に関わり合ってコミュニティを形成していけるような住宅開発は、実はこれまでにも数多く提案されてきた。この計画は、そのような中でも突出して「交流」に対して踏み込んだ提案をしている。敷地境界を自由に通り抜けられるだけでなく、誰でもが腰掛けることのできるベンチなどの設え、そして何よりも、各住戸の部屋が、その通り抜けに対して実に開放的に作られている。これならば、隣家との交流は、ごく自然に促されていくことだろう。空間の力を信じているこうした設計姿勢は、高く評価したい。