水辺景観創造型分譲住宅

東京ストリームサイド

株式会社中央住宅

マインドスクェア事業部
プロデューサー:品川 典久
ディレクター:成瀬 進、金井 秀徳、鈴木 征道
デザイナー:大貫 恵、沖村 英昴、菅谷 美月、上條 響、グローバルホーム株式会社 栁澤 亮太

閉じがちな北側に
バッファゾーンを設けて開き、
ゆるやかにつながる水辺景観を
創出する開発手法

概要

東久留米市の清流「落合川」沿いに建つ8戸の分譲住宅です。地域住民たちが自然と触れ合える親水整備が公共主体で進む中、これに呼応すべく生態系と景観への配慮から緑視率を高めた傾斜面の庭で、水辺の親水景観を展開させました。ここに住む新住民たちが自然を満喫しつつ、自らが借景となるような街並みを創出し、一帯の美景観拡張を目指しました。

自然生態系と清流沿いの美景観保全という観点から、高低差の処理を擁壁という人工物に頼らず芝の法面処理とし、在来植物を中心に植樹することで、野鳥や昆虫等川沿いの小動物の生息領域を確保する設計となっており、家族が自宅の側で自然と触れ合える環境を生み出しています。

川に開いた街並み

特徴
川沿いの豊かな自然と生態系を守っていく
バッファゾーンによる風景の創出
人々の振る舞いと豊かな暮らし
ここに住む住民たちの営みが一体の自然風景を創り出す
背景
本開発は、『東京別世界』を謳い豊かな自然環境を誇る東京のベッドタウン東久留米市にある。市のシンボルである清流「落合川」の支流に面しており、一帯は川に入って遊べる川岸や遊歩道等、身近に自然と触れ合える公共整備が進んでいる。周囲の住宅に目を移すと、河川境界まで建物が迫り、単なる眺望の良さに留まるだけで景観を配慮して設計したといえる住宅はほぼみられないのが現状である。そこで民間の街づくりも人と水辺の関係性を重視することが肝要であると考えた。川と住戸の間にゆとりを設け景観に溶け込むように緑の傾斜庭をバッファゾーンとして展開させ「自然浴」、「交流」といった新住民たちの憩いの場としての活用と、「生態系」、「景観」の保全を同時に叶えられる汎用性の高いデザインを追求。こうした水辺景観における住宅開発が、今後のロールモデルとなって地域社会に貢献し、更に波及していくことを目指している。
デザインのポイント
1. 自然生態系と川沿い景観の保全のため、擁壁等の人工物に頼らず、芝法面等による有機的な処理を行った。
2. 北に面する河川側を生活の表舞台として展開させ、「自然浴」しながら「交流」が生まれる場を提案した。
3. 在来種中心の植栽や川砂利敷の平場等、自然景観に馴染む設えで、美しい水辺景観の一部となるようにした。
経緯とその成果
敷地は全体面積1097㎡で南東は既存公道、北は河川に面し、北に向かって2.5m程傾斜しています。北の対岸は遊歩道が整備され、地域住民が清流の眺めを足を止めて楽しむ長閑な光景がみられる。もしここに高低差の処理をするための擁壁を設けた場合、河川面に大きな影と圧迫感をもたらし、景観を阻害しかねないと判断した。そこで擁壁に頼らず川砂利の平場と芝生の法面で処理し、水辺側の敷地にゆとりを持たせた区画計画を実行させた。傾斜面は生活上、使いにくい特性を持ちますが、この見晴しの良さをメリットに自然景観を取り込む室内空間を創造。内と外をつなぐデッキからサブテラス、最下面の平場へと下っていく過程で景色の変化が楽しめるように工夫した。また季節毎に楽しめる在来種を主とした植栽で緑被率を高め、対岸側からは美しい借景として楽しんでもらうと同時に、自然生態系に優しい環境をつくることができた。
審査員評価
河川沿いであるという敷地条件を積極的に生かした分譲開発として高く評価した。北に面する河川側という通常は裏手として処理しがちな部分を、積極的に良くしようとしている。川を臨む側に降りていける動線は、テラスとともにそれぞれの家族に息の抜ける場所を提供している。住人同士のつながりも、この川への見晴らしが自然に促進するだろう。このような敷地内のデザインが、対岸の遊歩道から眺めた時にも、しっくりくる風景を作り出している。地域への愛が実感できる街並みづくりである。