路地から地域をつなぐ分譲住宅

ベルフォート北本

株式会社中央住宅

戸建分譲設計本部 設計一部
プロデューサー:品川 典久
ディレクター:野村 壮一郎
デザイナー:古垣 雄一、菅原 雄太、藤田 哲也、町田 純一、合田 早希

敷地境界を可変的に扱う街づくり

概要

北本市の10邸の分譲住宅です。
各邸から拠出した住戸間の敷地に地役権を設定し隙間を張り巡らせるように路地状空間を形成しました。本来使われない敷地境界の隙間を住まい手と地域をつなぐ場に転換しました。路地沿道を豊かな緑や景観形成の場として活用し、事業者・住まい手・北本市NPO法人・近隣農家等のコミュニティ醸成を前提とした暮らしづくりを構築しました。「持続可能+環境共有型」プロジェクトです。

木陰で涼む、路地を歩く、集まり会話する等の暮らし方や過ごし方、構築したプログラムにより、ただの敷地境界に過ぎなかった空間が人の行為により機能を持ち、可変的に扱うことのできる空間へ転換させました。

地域とつながるコミュニティの醸成

特徴
路地空間とつながる室内設計
街路樹による木陰の創出
地域のパートナーとともに紡ぐ食育・地域魅力体験プログラム
近隣農家による寄せ植えワークショップ
背景
従来の都市型の分譲住宅は、敷地との境界はブロックとフェンスで遮断され、隣棟間隔が近く風通しが悪く、陽が当たりにくい庭や使い道がない空間が生まれやすい。隣り合っているのに顔を合わせる機会が少なく希薄なコミュニティになりがちである。また交通量のある道路に接する宅地を開発する場合、住まい手、特に子どもの安全の担保、コミュニティ醸成も難しくなる。そのために新たにコミュニティスペースとして共有地や開発道路を設けると、有効宅地面積が減り、10邸から7邸のように販売戸数が減ることで販売価格も高くなるため現実的ではない。そこで隣地との境界、普段使われない敷地の裏側に着目し、昔から親しまれてきた路地空間のような共用コミュニティースペースの創出を、新しい街づくり、暮らし方の提案、更には敷地の一部を拠出し合い地役権を設定した路地空間にすることで、住民に当事者意識を持たせ、持続可能な暮らしも実現できると考えた。
デザインのポイント
1. 敷地の一部を拠出し合い、地役権を設定した共用路地空間を街の骨格として創出。歩車分離、多方向避難を確保
2. 各邸の間取りと緑豊かな路地空間を一体で計画し、プライバシーを守りつつ、暮らしの中に自然を取り込む
3. 緑豊かな路地空間を拠点に事業者、住まい手、北本市、近隣農家のコミュニティ醸成を前提とした暮らしづくり
経緯とその成果
【街づくり】隣地との境界、普段使われない敷地の裏側に着目し、有効利用を考えた。各敷地の一部を地役権により拠出した共用コモンスペース(路地空間)を街の骨格とし、歩車分離、多方向避難を確保。路地空間の地表面被覆は透水性インターロッキングを採用し路地沿道部と公道側の分散緑化によりヒートアイランド対策とした。沿道部には家庭菜園スペース・雨水タンク・ベンチ・緑豊かな植栽をデザイン。各住戸のアプローチと生活の向きを路地空間に向けて計画しつつ開口部の位置と植栽による視線のコントロールでプライバシーを確保。

【地域づくり】路地空間を住民コミュニティの拠点と定め、事業者が中心となり、造園業者、近隣農家、北本市NPO法人と協同で植栽のお手入れ、食育ワークショップ等をプログラムし多世代の交流と人の集まる居心地の良い空間形成を重視した計画とした。路地空間は住民同士も顔を合わせやすくなるので防犯意識も高まる。
審査員評価
埼玉県北本市の北本駅から徒歩圏内、周辺環境は低層の住宅地が広がる敷地である。分譲住宅群として良好なコミュニティを形成するため、敷地境界に着目し、400mm~800mmずつ土地を拠出し、そこに地役権を設定したことで、共有の路地を創出した優れた計画である。共有の路地には、植栽、家庭菜園、ベンチを配し、植栽は近隣農家による寄せ植えワークショップを行うなど愛着を育むプログラムを計画し、平面的にもその路地に住宅のリビングを配置し、路地に生活が溢れ出し、交流の可能性を創出した素晴らしいエリアデザインである。