ポラスの分譲住宅

壁面後退による未利用地を小路に

Liberation Space

ポラスマイホームプラザ株式会社

プロデューサー:森田昌久
ディレクター:内野貴通
デザイナー:吉岡祐馬

街区の中心に生まれた小路により、
互いの住宅の課題点を
解決するための互助の関係を提案

概要

地区計画で守られた街並みの中にある3棟の分譲地。画一的に隣棟間隔を確保するのではなく、互いの敷地の一部を拠出し、地役権を設定することで、普通なら裏となる場所を表とし、四季を感じる小路を創り出すプロジェクト。

この前提となったのは、従来の家の裏側の問題点。0.5m~1mの空き寸で作られた犬走部分の用途は室外機置き場としてしか利用方法がなく、これでは地区計画で1m近く境界線を壁面後退させても敷地を有効活用されないため、本物件のような計画とした。小路の余白部分には樹木を植え、光と緑を感じられるようにしている。

壁面後退した部分に地役権を設定し、各敷地の一部を拠出した南北の小路を計画

特徴

コンセプト壁面後退により解放された未利用地部分の空間提案

歩車分離により安全性に配慮
本計画の区割り
各邸のプライベートの目線や植栽の管理も配慮
Liberation Space
【小路の有効活用】
本計画では隣地境界線から壁面後退した部分に地役権を設定し、各敷地の一部を拠出した南北の小路を計画した。小路の一部には排水用地を設定し、通り抜けができることで南側の歩道へのアプローチが可能となる。また建物の玄関アプローチも小路から計画することで、子どもの飛び出しや住民同士のコミュニティ形成にもつながる。緊急時には、南北の異なる道路へのアクセスも可能となり二方向への避難通路としても利用できる。その際他者の侵入を防ぐと同時にアイストップとなるよう小路をフランクさせ、段差を設けることで単調になりがちな狭い道ではなく、街の中心にヒューマンスケールの余白部分を創出した。小路の余白部分の樹木は住宅の窓から見える位置関係となっていたり、小路によって開いた空間からの自然光が住宅に差し込むようになっていたりと互助の関係を構成した。従来の画一的な壁面後退ではなく、敷地を最大限有効活用した空間提案となる。
【新しい考え方】
通風や採光など豊かな街作りの為に行うことであるが、これまでの壁面後退の結果はコストや効率化を考え画一的にただ行っただけという印象が強い。その為犬走の空間は室外機や給湯器などの置き場としてしか使われずにいた。今回その空間を住民同士で共有し、少し拡幅することで安全な歩道から玄関へのアプローチを可能にしたり、排水用地の一部を小路として利用したり、各邸の通風や陽当たりも格段に良くなった。また小路をリビングと繋げるのではなく、ワークスペースと関係性を持たせることで職住一体化しつつある時代に対応させた。
審査員評価
条例などで定められた壁面後退は、通常、隣棟間の距離の確保には役立つものの、使いにくい隙間として残置されてしまうことが多いのだが、本計画は、3棟の分譲住宅の壁面後退により生まれた未利用地を合算し、一体的な使える隙間と捉え、コミュニティのための場所として再評価している。また、敷地の接道方向を生かしてこの使える隙間を各家にアプローチするための小径とし、リビングの配置及び開口位置とも合わせて計画することにより、各家にとってなくてはならない場に昇華させている。ぜひ、今後もこのような計画に積極的に取り組んでほしい。