ポラスの分譲住宅

3つの距離感を持つ庭

唯・巧・居(イ・コ・イ)の家

ポラスガーデンヒルズ株式会社

ディレクター:工藤政希
デザイナー:松井孝治、稲葉瑛

if design brain一級建築士事務所と共同受賞

プライベート性と開放性の両立
集まって住まう距離感

概要

一般に分譲住宅は、場所、広さ、プラン、価格等の数量的指標で評価されることが多い。それらを重視した結果、経済合理性に則った居住空間の過密化や、コストやプライバシーを過剰に追求した閉鎖的な箱型住宅が量産される傾向にある。

この状況に対し、居住空間をプラス方向に導く都市型居住の在り方を再考した。これまで重視されてきた数量的指標に加えて、情緒的指標として「距離感」に着目した。3つの「庭」が、例えばカフェにおける他者との距離感のような、自然な距離感を生むことで街を紡ぎ、その街が周辺環境に滲み出すことで緩やかに界隈性をもたらす空間の構築を目指した。

間口と奥行きの差を利用して4棟の庭として一体的にデザイン

特徴

コンセプト 3つの距離感を持つ庭

空と庭の空気を感じる「空居間そらいま」のある暮らし
4棟を一体的にデザインすることでできた「縁庭(へりにわ)」
隣の家の壁までの距離を自分の家のように感じられる「斜庭(はすにわ)」
玄関とつながる中庭は現代版土間的使用が可能な「路庭(みちにわ)」
【設計プロセス】
適度なプライバシーを持つ「都市型居住の自然な距離感」=「閉と開の共存」と捉え、企画段階からの内外空間を一体とした思考が重要だと考えた。そこで建築と外構それぞれのプランナー及びデザイナーのクロスファンクショナルチームを結成し、従来の分業化された設計プロセスを改め、区割、配棟、建築、外構を同時に検討することで、3つの距離感を持つ庭を解とした
【設計ポイント】
本計画では細長い建物形状に仕掛けづくりの可能性を見出した。東西方向に対しては2棟一体、南北方向に対しては4棟一体で分譲地を捉ると、通常であれば閉じてしまう部分に、互いが交わる3つの庭空間が生まれ、人と家、家と街、光や風が柔らかく連続する距離感を実現した。一見するとこの形状にはプランニングの不自由さを感じるが、この庭空間を利用してアプローチを抱き合わせで提案することで間口のゆとりを確保し、心地よい空間を生み出した。
【3つの庭】
【縁庭-へりにわ-】行き止まりの空間をひとつながりに演出し、半ば庭を共有しているかのような不思議な空間が出現する。これらの空間は、界隈性を以って家と街をつなげるきっかけを与えてくれる。【斜庭-はすにわ-】坪庭を斜向かいに配して隣家の壁まで自分の家のように見せ、広がりを感じさせる。斜により見え隠れするお隣の気配が、付かず離れずの距離感を生み出す【路庭-みちにわ-】互いの生活を適度に隔てる透かし壁が、道路を行き交う人々の視線を誘うが交錯はしない、緩やかに街に暮らしを垣間見せる路地空間を提供。
審査員評価
路庭、縁庭、斜庭という三つの外部空間のアイデアを丁寧に街区計画に取り込み、プライベートと開放性を両立させながら、良質な街区形成を狙う。駅から徒歩圏の好立地・かつ4住戸の最小の開発単位である。当然ながら計画の自由度は少ないが、このような条件の中でも、住戸を越えた空間のつながりをつくろうとする姿勢は重要である。今後は、庭のアイデアがさ更に内部空間の構成にまで影響があると、より素晴らしいものになると思う。継続的に可能性の追求を試みてほしい。