ポラスの分譲住宅

雨水貯留施設の上部公園

咲が丘3丁目緑地

中央グリーン開発株式会社

ディレクター:望月 剛、小林 亮一、坂本 寛和
デザイナー:望月 剛、野田 賢次郎、杉山 秀明、萩原 誠、相内 さやか

株式会社アクトデザインと共同受賞

人を集め、つながりを生み出す、
宅地開発における新しい雨水貯留施設の在り方を提案

概要

千葉県船橋市に新たに建築される62棟の新築分譲住宅地。この開発区域内には、行政指導により、近隣の既存住宅地との境を遮断するように、約1000m²を超える雨水貯留施設を設けなければならなかった。 周辺は、新京成線の整備により昭和30年代から現在に至るまでに建ち並んだ住宅街は比較的高齢化が進む中でも生活者は多世代に渡る。 そこで、通常は無機質なコンクリートの壁を設ける雨水貯留施設を地下部に埋め、上部を公園とするデザインを考えた。

時代とともに疎遠になりがちなコミュニティ。我々が目指したのは多世代の交流が生まれ、毎日使いたくなる公園。水害を防ぐ重要な役割を担う暮らしに欠かせな い雨水貯留施設を、新たに暮らし始める住⺠と近隣住⺠とが自然とつながる地域交流の場としてデザインした。

雨水貯留施設を地下部へ埋設し、地上部を有効活用

特徴

コンセプト 雨水貯留施設を地下部へ、新旧住民のコミュニティの場を地上部へ

周辺の住宅街は、比較的高齢化が進んでいる戸建中心の住宅地
緑で彩りリゾート感溢れる公園
新旧の住民が自然と行き交う穏やかな交流の場を実現
新たに暮らし始める住民で管理組合を設立
【雨水貯留施設】
行政指導による雨水貯留施設に、ただ雨水を貯めるだけではなく、その土地を有効に利用し人がつながり、集まる場を計画した。従来の雨水貯留施設のつくり方では、コンクリートの壁とフェンスで囲まれ、人が入ることができない無駄なスペースでしかなかった。しかし、この仕様が一般的であり、灰色のコンクリートの壁では周囲の人々に大きな圧迫感を与えると同時に土地を分断する。そこで雨水貯留施設を地下に埋設し、上部を公園として利用することを考えた。
【設計】
雨水貯留施設を地下部へ埋設し、人が誤って転落するような危険と不安や、害虫や悪臭等の不潔さや不快感もなくなり安全面や衛生面も改善した。また、道路から垂直に立ち上がるはずだった壁やフェンスが、緩い斜面による法地の形成 となり鮮やかな緑地を生み出したことで、見た目にも優しいデザインとなった。
【自治運営】
新しく暮らし始める住⺠と園内の一部の植栽を管理することを目的の一つとして管理組合を設立。この公園の管理以外に分譲地独自のカーシェアリングサービスの運用、協定スペースの修繕管理や分譲地内に設置させる防災ベンチ、防犯カメラの管理・運用を行い、コミュニティの形成を図っている。
審査員評価
既存住宅地に隣接した新規分譲住宅開発においては、既存の地域コミュニティと新たに暮らし始める住民との関係性をどう構築するかが大きな課題となるケースがよく見受けられますが、この作品は開発行為に伴い設置が必要となる雨水貯留施設整備に際して、上部を公園とすることをきっかけに、新旧住民の関係性を継続して紡いでいけるような仕掛けとしようという試みです。公園としての居心地や環境整備については今後少しずつ改善していくことが望まれますが、既存住宅地のゴミ集積場をあえて新規住宅地のゴミ集積場の隣に移設し、新旧住民の接点を増やす取り組みや、管理組合を設置して公園の維持管理を通じて住民の交流を促進させる仕組みなど、新規住宅地開発における課題に真摯に取り組んでいる事例であると思います。