ポラスの分譲住宅

農を軸とした地域交流型分譲住宅

北浦和みのりプロジェクト

株式会社中央住宅

戸建分譲設計本部 設計一部
ディレクター:野村壮一郎
デザイナー:株式会社中央住宅 野村壮一郎、酒井かおり、府川哲大、黒田武志、新垣献、吉田怜渚
ポラス株式会社 仲麻衣子、株式会社こばやし農園 小林弘治

農園と自邸の庭をリンクさせた街づくり

コンセプト見沼たんぼの農家と協働で創る
住農融合コミュニティ

概要

緑と歴史ある風景が広がる大規模緑地空間・見沼たんぼに車で数分ほどの距離となる、さいたま市緑区三室に位置する全51邸の分譲地。
この立地を活かし、街区内コミュニティの醸成にとどまらず、見沼たんぼを含めた地域コミュニティの活性化を図る新しい「地域版アグリフッド=アグリカルチュラル・ネイバーフッド(農のある近隣コミュニティ)」を提案するプロジェクトと位置付け、活動プログラムの組成を中心に(株)こばやし農園と協働で開発した。

「みのりプロジェクト」は、「居・食・住」をテーマに庭や緑との関わりを深めた住宅や庭を設計。
見沼たんぼでの農作業と自邸の庭仕事をリンクさせ、日常化させたフードサイクルや農体験を軸としたコミュニティを大人から子どもまで幅広く構築する新しいスタイルの分譲住宅として様々な媒体に取材を受ける等、注目を集めた。また受賞実績としてキッズデザイン賞やジャパンレジリエンスアワード等がある。

農園での体験農業と自邸での庭仕事をリンクさせた街づくり

特徴
農ある暮らしと景観形成を両立させる外構計画
森の木立を街中で表現したファサード
農家が家庭菜園指導を行うワークショップ
新しい住農融合コミュニティ「地域版アグリフッド」概念図
背景
住宅地開発では街区内に限られた交流と世代の偏りが課題としてあげられる。より広域な多世代交流を形成するには、街区と地域とのつながりを日常化する仕掛けが物理的な「モノ」だけでなくプログラムされた「コト」や関わる「ヒト」が恒久的に必要と考えた。そこで見沼田んぼの広がる近隣状況から「農」を軸とした地域連携を街づくりデザインに採り入れ、子どもから大人まで幅広く学びや交流の場を創るとともに、その場を活かすための近隣農園との連携を模索した。また農場は従事者の減少で休耕地が増加傾向にあり、見沼たんぼも荒地化に対し市も対策に乗り出していることから、農場への新たな人の流入を促すことは地域活性化につながると考えた。
デザインのポイント
1. 分譲地の各邸の庭に装飾菜園、雨水タンク、収穫樹、緑のカーテン等を配し、自邸でのフードサイクルを設計
2. 見沼たんぼの農園が分譲地の菜園や植栽管理指導を行い、住民は農園での体験農業に参画するプログラムを組成
3. 見沼野菜の積極活用やコミュニティキッチン等の食育も含め、家の内外で幅広く「居・食・住」を充実させる
プロジェクトの意図
本プロジェクトを皮切りに近隣の新規プロジェクトに展開し、農を身近なテーマとして地域活性化を意図した新しい住農融合コミュニティ「地域版アグリフッド」を広げ、また「みのりプロジェクト」の波及効果として多世代・多様なコミュニティの形成に加え、地域の見沼たんぼの活用、農家・農地・農業従事者の増加にも寄与できればと考えている。そのように新築分譲住宅と近隣の農地・農家と共同で地域を創る「みのりプロジェクト」はこれからも続いていく。
審査員評価
プロジェクトの趣旨や目指すところに共感する住人が集まるコミュニティ開発の好例であろう。近隣づきあいと農地を舞台にした交流という2つのスケールを組み合わせている実践が特に評価された。それぞれのスケールを跨いだ相互交流が発展し、新しい形での地域活性化として根付くことが期待される。また、現状ではエクステリアを中心に「農」や「緑」に関連づけられたデザインが展開されているが、今後はそれが住宅のプランニングにまで踏み込んだ提案へと発展することも期待したい。