浦和美園スマートエネルギー特区 つなぐ庭のある街区——土地の分かち合いによるコモン創出型戸建分譲開発

ポイント
『浦和美園E-フォレスト・つなぐ庭の街区』は、さいたま市の地域活性化総合特区「スマートエネルギー特区」事業のサスティナブルな分譲住宅地。「分かち合いと向かい合い」をテーマに、各宅地の一部を拠出し、中心にコモンスペース「つなぐ庭」を創出。
日常の景観形成や安全確保から非常時対応までヒートショック対策を講じた建物とともに住民の健康を支える街づくり。
ポラスの分譲住宅
▶背景・意義
開発道路のある分譲開発では、自然とコミュニティが醸成されるのに対し、島型の区画割の分譲開発では「向かい合い」の関係が創りにくく、コミュニティや景観の分断につながってしまいます。また道路からの距離を確保するため、建物同士を接近させるケースが多く、敷地内に「建物の裏側の未利用地」ができてしまいます。
そこで戸建分譲住宅の開発者として、地域コミュニティを育む街を広めるため、全邸の敷地を利用しアプローチを介して向かい合う共有地「つなぐ庭」を創り、建物の裏をなくすことで、一般の分譲は未利用地化してしまう空間を共助の場として再構築させました。
歩車分離や採風、延焼抑制、他方向避難等で「健康・安全・共助」を叶え、将来にわたる街のサスティナビリティを目指しました。また地域活性化総合特区の事業であり、つなぐ庭をワークショップの場として設定し、土地の分かち合いが、住民と地域のコミュニティ形成の要となります。
▶コモン創出型の分譲住宅の実例
『浦和美園E-フォレスト・つなぐ庭の街区』は、さいたま市の地域活性化総合特区「スマートエネルギー特区」事業のサスティナブルな分譲住宅地。21棟の細長い島型の開発地の中心に各宅地の一部を公平に分かち合うことで、フットパス状のコモンスペース「つなぐ庭」を創出し、向かい合いによるコミュニティ醸成と、緑地広域化による景観形成を図りました。歩車分離の通行、建物の隣棟間隔による延焼抑制、災害時の多方向避難等、日常の安全確保から非常時対応まで幅広く街のサスティナビリティに貢献し、高断熱化によるヒートショック対策を講じた建物と共に、さいたま市の公募型プロポーザルコンペにて最優秀企画提案事業に採択されました。
フットパス状のコモンスペース「つなぐ庭」
街の中心のコミュニティースペース
灯かりのいえなみ協定によるライトアップ
▶特徴
【街づくり】 各宅地の一部を拠出したフットパス状の共有地「つなぐ庭」を創り、建物の「裏側」や宅地内の「未利用地」を解消。隣棟間隔を確保し、街の彩風や延焼抑制、緑地の分散化による広域な緑地に配慮。「つなぐ庭」の地中に電線・通信網を設置し、ローコストの無電柱化を実現。コモンアクセスの玄関設定による歩車分離やコミュニティ醸成、多方向避難路の確保、緊急車両を通行可とする設定、雨水利用タンクや家庭菜園による生活用水・非常時食料の確保等とともに災害に強い街の形成を実施。
【景観づくり】 フットパスの地表面を統一された素材の天然石敷とし、ベンチや協定樹木を配置。
【家づくり】 全邸Ua値(※)0.46を達成。非暖房時も概ね室温15℃を保つ高断熱設計。
【地域づくり】 地域と住まい手の協同による街づくり実現のため官民学によるタウンマネジメント協会と連携し、共有地管理や地域情報の提供、ワークショッププログラム等を構築。
※Ua値:外皮平均熱貫流率。 住宅の断熱性能を表し、数値が小さいほど性能が高い。 各部位から逃げる熱損失を合計し、外皮面積で割って求める
超高断熱仕様のモデルハウス
審査員コメント
従来の宅地開発を刷新する裏庭・裏路地型のコモンスペースを設けた分譲住宅地である。
塀をめぐらし、境界を明示する従来型の宅地開発を超えて、新しいコミュニティを形成する意欲に満ちている。

House I——周辺環境が変化しても都市生活に風、光、緑を取り込むライトコート

ポイント
都市部では時代が移り変わるにつれ、住宅の周辺の環境や街並みが変化する。窓から見える風景も建築当初とは全く違うものになるのも当然の帰結。「内部・外部を繋ぐクッション材の空間を持つ家」では、外部の環境の変化にも動じず、自然の恵みを体感しながら生活できる。
  • PO HAUS
ポラスの注文住宅
外部空間と内部空間を繋ぐライトコート
▶背景・意義
東京では地価価格が圧倒的に高価であり、ローンで土地・建物を購入しなければならない購入者は限られた宅地を選定せざるを得ないのが現状です。
また周辺環境や街並みの変化が早く、窓から見える風景も建築当初とは全く違うものになってしまうものです。ストック社会を目指し、普遍的でかつ都市部の住宅が抱く騒音や防犯などの多角的な問題を効果的に解決した魅力的な住空間の創造が必要と考えました。
その中でも、一般的で普及率の高い材料や建材をあえて選定し、コスト・施工性を意識しながら空間構成によって住空間の豊かさを訴求しています。
周辺環境が時間軸によって変化しても、住空間のライトコートや上部からの採光・採風を得ながらプライバシーを確保できる都市型空間構成を実現させました。
▶特徴
一般的で普及率の高い材料や建材をあえて選定し、コスト・施工性を意識しながら空間構成によって住空間の豊かさを訴求。
周辺環境は時代によって変化しても、住空間のライトコートや上部からの採光・彩風を得ながらプライバシーを確保できる都市型空間構成を実現しました。
内部空間は、2階建ての建物の中に4層の床レベルを創造し、建物に生じる隙間を利用して疑似的に自然の森にいるような階層を目指しました。
上部からの採光・採風を得られる内観
シンプルなLDKと起伏性ある空間構成
外観と周辺環境
審査員コメント
都市部にありながら良好な住環境を確保するデザインを追求すると、しばしば閉鎖的で無愛想な様子となる。
この住宅はそうした内向きの良さと外観とのさり気ないバランスを気遣うデザインが成功した事例だろう。

G-cube——独立柱と基礎を構造的根拠をもって繋ぎ、開放的な半屋外空間を実現

ポイント
木造在来工法では、柱を建てる際に土台を必要とするため、独立柱を基礎に直接建てるのは困難でした。
G-cubeは土台を金物に置き換えることで構造計算に対応する独立柱を基礎に直接建てられるので屋根付きテラスなどの外部空間の設計の幅が広がります。
  • 中央グリーン開発株式会社
ポラスの分譲住宅
▶背景・意義
屋根付きテラスなどの半屋外空間は内と外を繋ぐ緩衝空間として機能し、住戸デザインや街並みに豊かな表情を与えることが出来ます。
この屋根を支えるパーツは閉鎖的な袖壁でなく、独立柱による軽快なデザインが求められます。
しかし、これまで柱を基礎に固定するためには土台を必要とし、結果、壁が建つこととなっていました。例外的に、後施工アンカーで柱を基礎に固定するタイプの柱脚金物を用いて独立柱を使用しますが、この柱は構造計算に対応しないため、上部の梁を室内から跳ね出して柱に荷重をかけない“装飾柱”とする必要があり、出幅も制限され、上部の梁も太くなるので室内の天井高さにまで影響が出ていました。
G-cubeを用いた柱は“土台を金物に置き換えて”安全に柱を基礎に固定できるので、構造計算に対応し、独立柱による明るく開放的な屋外空間の設計を可能にします。
▶特徴
【デザイン】 基礎と柱を繋ぐのに土台(≒壁)を必要としていたところを、G-cubeに置き換えることで屋外でも独立柱を用いた開放的なデザインが設計可能になります。
屋外での露出に対応したメッキ塗装をし、かつ様々な外観に対応するために現場塗装も可能です。
【施工】 既存のポラスオリジナル引っ張り金物を活用し、またG-cubeの上部をほぞ穴を模した形状にすることで精度よく柱を施工することができます。
【構造計算】 独立柱に生じる引っ張り力と圧縮力の両方を負担し、構造耐力上主要な柱として構造計算に組み込むことができます。
審査員コメント
⽊造建築において、独⽴した柱と基礎をつなぐための⾦物である。基礎のアンカーボルトで横位置の微調整が可能で、精度よく施⼯ができる。通常の施⼯だと屋根の荷重は梁を跳ね出して⽀える必要があり、軒の張り出し距離を制限していた。
この⾦物は独⽴柱で屋根の圧縮荷重を⽀え、吹き上げる⾵圧による引き抜きの⼒にも耐える。
⼩さな部品ではあるが独⽴柱を構造計算に組み込むことができるようになるため、梁断⾯を⼩さくし屋根をシャープにできるなど、住宅のデザインに⼤きく貢献する優れた提案である。

ポラスフレームシステム「合せ梁・合せ柱・重ね梁」——60分準耐火性能を有する木製合成柱・梁

ポイント
一般規格流通材の束ね合わせによる低コストな大断面部材を研究開発。大空間を木で建てられる、コストバランス、木の良さを活かせるなど、中大規模木造建築の新しい選択肢を生み出しました。
  • ポラス暮し科学研究所サイトはこちらからポラス暮し科学研究所
▶背景・意義
木造建築物で大空間を成立させるには、断面が大きな梁や柱を使う必要がありました。しかし大断面の梁や柱は材として強い反面、価格や納期、運搬の面での不利が無視できません。そこで、一般の住宅向けに流通している規格材を束ねることにより、安価で手に入りやすく、大断面集成材と同等の構造性能を持つ、新しい梁と柱を開発しました。『合せ梁』、『合せ柱』、『重ね梁』の3種は、1時間準耐火性能も保有しており、強度・性能・コスト感ともに中大規模木造建築に新しい選択肢を創出しました。
同システムはポラス建築技術訓練校にて採用しております。
使用実例:ポラス建築技術訓練校 実習棟
組み立てや施工の様子
▶特徴
コンセプト: 断面の小さな規格流通材を束ね合わせ、またシンプルな加工形状で従来よりも安価に大断面木造を実現すること
一般流通材・規格材の利用、住宅用プレカット加工および接合金物の利用にこだわり、空間とコストバランス、通常の運搬方法、平易な施工方法の実現を徹底しました。
『合せ梁』 住宅用集成材に用いる幅のラミナを積層した特注サイズの集成材を横に並べてボルトで連結しました。
『合せ柱』 9本の住宅用集成材を使用。構造躯体となっている十字に組んだ5本の柱の周りに残りの4本の柱を火災時に構造躯体の炭化を防ぐ部材として接着している。接着に一般的な建築用ボンドを用いることによって、施工の平易さも加えました。
『重ね梁』 一般住宅向けの断面・長さの集成材に、住宅用プレカット加工機でできる標準的な加工を行い、鉛直方向に積層。最長で16mのスパンを可能にしました。
審査員コメント
各種建築において木材の利用が始まっている一方で、10mを超える大スパンの加工では、木材の断面が大きくなり、集成材を用いることが一般的である。
この場合、製作納期や経済的な理由から、木材を用いることができる計画が限られるため、今一つ木材利用が広がっていない。
本システムは、規格材を組み合わせて用いることにより、大スパンに対応しつつ合わせて1時間準耐火を実現しており、木材需要を大きく広げる可能性がある。