- ▶背景
- 近年、都市部の密集住宅地では、耐震性向上を目的とした耐力壁設置や、隣家とのプライバシー確保のために、必然的に窓の設置数が減り、宅地面積自体に加え窓のサイズや数も縮小傾向にあります。結果、薄暗い間取りになりやすく、住まい手の思う自由な空間構成が十分に図られてきたとは言い切れません。
そこで、都市型狭小敷地でも、従来通りの耐震性を確保しつつ、明るく開放的な住空間を提供したい、と本商品の開発をスタートさせました。 - ▶デザインコンセプト
- 開口部設計の自由度を上げ、多様な住空間デザインを叶える耐力壁。
- ▶企画・開発の意義
- 耐震性・採光性・視線遮蔽性・施工性・意匠性の相互補完による、「自由度の高い開口部設計」と「明るく開放的な住空間」を実現させました。空間の壁面、四辺全てをハイサイドライト化できるため、隣地からの視線を遮りつつ十分な自然光が得られます。
また、シャープさを追求したプレースフォルムにより、構造を空間側に露出させるデザインになっています。仕上げ材の上から施工可能なため、耐震補強リフォームも簡易に行えます。 - ▶創意工夫
- 【耐震性&採光性&視線遮蔽性】耐力壁の上下どちらにでも窓を設けることができるよう、柱長さの71%のみを確保する筋交いの設置で強度を発揮する構造としました。また、筋交い背面は壁と窓の選択を可能とし、開口設計に自由度があります。
【意匠性&耐震性】ブレース型耐力壁としての機能を発揮させるため、一般的に用いられている「ターンバックル」の代わりに、「ブレース全体がひとつのターンバックル」となる構造を採用。両端を逆ネジ化したブレースを高ナットで締めることで、柱との接合が可能。ターンバックルを使用した場合と同じ強度を発揮するしながらも、スタイリッシュな形状と納まりを実現しました。
【施工性&意匠性】耐震リフォームでも利用できるよう、壁紙を貼った上から取り付け可能な構造です。空間側に表れる耐力壁として美観を保つため、ステンレス材を採用。端部の金物形状には丸みを持たせ、インテリアパーツとしても遜色ないデザインです。 - ▶デザイナーの想い
- 制限が多い都市部の住空間づくりをより自由に行いたいとの想いから、耐震・採光・視線遮蔽・施工・意匠という5つの要素が併立する構造を考えました。結果として、これまで住まいの安全性と引き換えに犠牲にしてきた、「明るく開放的な住空間」を提供することができました。光の取り入れ方を、空間の心地よさ重視で選べるようになったことで、そこに住まう家族の暮らし方をよりソフトな面から描く可能性を広げています。