賃貸経営コラム

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相続等により取得した土地を国庫に帰属させる新制度について

2022.12.20

弁護士
田中 智美 氏

田中 智美 氏
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 2021年4月21日、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(以下「相続土地国庫帰属法」)が成立し、同月28日に公布されました。
 近年、親から土地を相続したものの、遠方その他の理由で利活用が難しく、かえって管理の負担が重いので土地を手放したいという方が増えています。これらの土地は管理が行き届かないために近隣住民の迷惑になったり、さらなる相続の発生で所有者不明となったりする恐れがあります。そのような管理不全状態を防止するために、全く新しい制度として作られたのが相続土地国庫帰属法です。
この制度は、大まかに言いますと、相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地所有権を取得した所有者が法務大臣に承認の申請を行い、その承認を得て、負担金を納付すると、対象土地の所有権が国庫に帰属(移転)する、というものです。
 国による管理コスト(原資は我々の税金!)の無用な増大を防ぐため、申請と承認には、次のような一定の要件(除外要件)が定められています。

【申請時に必要な要件】
①建物の存在する土地でないこと
②担保権・使用権等が設定されている土地でないこと
③通路その他、他人による使用が予定される土地でないこと
④土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地でないこと
⑤境界不明の土地、所有権の存否や帰属に争いがある土地でないこと

【承認時に必要な要件】
①崖地のうち、通常の管理にあたって過分の費用・労力を要するものでないこと
②土地の通常の管理・処分を阻害する工作物、車両、樹木、その他の有体物が地上に存在する土地でないこと
③除去しなければ土地の通常の管理・処分をすることができない有体物が地下に存在する土地でないこと
④隣接地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理・処分をすることができない土地でないこと
⑤その他、通常の管理・処分をするにあたって過分の費用・労力を要する土地でないこと
   無事に承認が得らえたとしても、それだけで対象土地の所有権を手放せるわけではなく、土地所有権を国庫に帰属(移転)させるためには負担金の納付が必要です(負担金の額の通知を受けてから30日以内に納付する必要あり)。
 この負担金は、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額、とされています。
 現状の国有地の標準的な管理費用(10年分)は、原野(それほど管理に手間がかからない)で約20万円、市街地の宅地(定期的な管理が必要)で約80万円(200㎡の場合)とされていますから、実際の負担金の金額もこれらの金額を参考に決められることになるでしょう。
 なお、相続土地国庫帰属法は公布の日から2年を超えない範囲で政令で定める日から(遅くとも2023年4月28日までには)施行されることになっています。 

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