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ポラスの事業

グループの力を結集してつくった、
環境リーディングタウン
〜大宮ヴィジョンシティ
みはしの杜〜

野村壮一郎
(株)中央住宅 戸建分譲設計本部 営業企画設計二課

野田将樹
(株)ポラス暮し科学研究所 住環境G

戸上義啓
ポラス(株) 購買部(当時)

グループの力を結集してつくった、環境リーディングタウン 〜大宮ヴィジョンシティ みはしの杜〜 Style」誕生秘話

2015年3月末、さいたま市大宮区に完成する「大宮ヴィジョンシティ みはしの杜」。総面積約2万5,300㎡に125棟が建つ、同市最大級の戸建住宅地である。コンセプトは“環境リーディングタウン”。環境や健康を重視した最先端といえる施策を集大成し、一般住宅より34%ものCO2削減を実現、国土交通省の「住宅・建築物省CO2先導事業」に採択された。この成果は、ポラスグループの力を結集することでもたらされた。中心的役割を担った、同い年3人の活躍を追う。

工場跡地を最先端のエコタウンに変える

工場跡地を最先端のエコタウンに変える

「大宮ヴィジョンシティ みはしの杜」がつくられた場所には、かつて工業用ゴム工場があった。新工場の建設による移転に伴い、土地の売却がコンペとなり、中央住宅とポラスタウン開発(いずれもポラスグループ)がジョイントベンチャーを組んで応札した。

「工場跡地というと、一般的に良いイメージはありません。また、大宮駅から徒歩で30分という距離もあって、こうしたマイナス要素を払拭できるシンボリックなコンセプトを打ち出す必要がありました。そこで出した結論が、シンプルに“環境の良さ”だったのです」と本プロジェクトを主導した野村壮一郎は説明する。

スウェーデンの首都ストックホルムのハンマルビー地区に、工場跡地を最先端のエコタウンに変え世界的に注目された先行事例がある。地域に密着するポラスグループはこの大宮エリアも熟知しており、「ここならハンマルビーのような住宅地がつくれる」というビジョンを描くことができた。大きなポイントなったのは、同地の南西部に隣接した鴨川と広々とした三橋総合公園の存在である。水と緑の景観がハンマルビーを連想させたのだ。この貴重な資源をうまく生かすことが、“夏は涼しく冬は暖かい”最先端のエコタウンに変えるカギになると野村は読んだ。

そして、野村はさらに国土交通省の「住宅・建築物省CO2先導事業」に採択されることを目論んだ。国の評価以上のシンボリックな“看板”はないからだ。しかも、開発費用の助成も受けられる。そこで、応募プランづくりのために、野村は野田将樹と戸上義啓に声をかけた。同い年の3人は、仕事を通じて意気投合した仲。2012年12月に施行された「低炭素建築物認定制度」の越谷市における第1号を獲得した物件を協力して手がけて以来、しばしば酒を酌み交わしながら「これからも環境指向の高い家づくりをしていこう」と話し合ってきたという。

「中央住宅だけでも分譲住宅地の企画から施工、販売までできるのですが、彼らの力を借りることでもっと価値の高い分譲住宅地をつくることができるとわかっていました。ですから、大宮も同じフォーメーションで行こうと考えたのです」と野村は言う。結果、国土交通省の認定を得ることにつながる。

流体解析システムで“夏涼しく冬暖かい” パッシブランドデザイン

流体解析システムで“夏涼しく冬暖かい” パッシブランドデザイン

環境に良い家をつくるには、周辺環境の力を取り込む“パッシブ”と、エネルギーをつくり出したり省エネルギーを実現させる設備を付加する“アクティブ”という考え方がある。ハイレベルなエコタウンをつくるには、この両方を取り込む必要がある。そこで、野村はまず“パッシブ”のために土地を最も効率的に使える従来型の区画を作成し、その区画における風の通り方のシミュレーションを野田に依頼した。ポラス暮し科学研究所には、過去の気象データから当該地区の風向きや風速を分析できる流体解析システムがある。

「その結果、従来型の区画では、夏場は風が淀み、冬場は川から寒い強風が吹き込むことがわかりました。そこで、直線中心だった道路や植栽の位置、住棟や公園の配置などすべて見直して、夏は涼しい風が吹き込み、冬は寒い季節風を低減させる配置を探っていったのです。この“パッシブランドデザイン”の結果、理想的な通風性のある区画ができました」と野田は胸を張る。

この解析には裏話がある。流体解析システムはそれまで通風性の確認程度にしか使っていなかったが、野村は「気温はどれぐらい下がるか」まで出すように求めた。

「最初は『できない』と言い返しました。それでも野村は食い下がってきます。こちらが根負けして、システムの機能を分解して一から検証し直したら、できるようになったのです。大変でしたが、野村のおかげで我々の技術も進化できました」と野田は述懐する。

“ヒートショック”や熱中症を防ぐ“健康にいい家

次は、1棟1棟の環境性能をどのように高めていくかの“アクティブ”だ。野村らは、「低炭素建築物認定制度」を取得した物件をベースに、さらに高機能を盛り込んでいくことを考えた。「低炭素建築物認定制度」取得物件においては、住宅の熱の半分以上が逃げる窓に最高グレードの「樹脂複合サッシ」を採用した。これは、サッシの外側はアルミ、内側を樹脂でつくることで、熱が伝わりにくくしたものである。さらに高性能の給湯器を設置し、トータルで省エネ性能を高めた。

これに、野田は2階の天井に形状記憶合金によるオリジナルの換気口の設置を提案した。気温が20℃を超えると自動的に徐々に開口し、30℃で全開するという“弁”のような画期的なものである。

「実は、“環境”という目に見えにくい概念でお客様にメリットを伝えるのは、そう簡単ではありません。そこで、我々は“健康にいい家”と打ち出すことにしたのです。その一つが“ヒートショック”や熱中症の防止です」と野村は言う

“ヒートショック”とは、暖かいリビングから急に寒いトイレに行くなどした時に、寒暖差により心筋梗塞などを誘発してしまうこと。交通事故の2.4倍もの死亡率となっている。そこで、断熱性や気密性を高めることで、部屋間の寒暖差を大幅に解消したのだ。

また、夏に家の中で寝ている間でも熱中症に罹る人が続出している。野田の開発した換気口があれば、熱中症は防げるはずだ。

スケールメリットを存分に活かし分譲価格を抑制

スケールメリットを存分に活かし分譲価格を抑制

「大宮ヴィジョンシティ みはしの杜」には125棟もの家が集まるので、顧客の好みで選べるよう、全体は素材を強調した「素足の家」、間取りプランを強調した「可変の家」、デザインを強調した「フレンチハウス」などにゾーニングされている。その中に「ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)」を設けた。屋根に太陽光発電装置を設置する一方、家全体の省エネ性を高めることで、エネルギー消費のプラスマイナスゼロを実現した家である。

「太陽光発電装置や省エネのための高性能の装置を導入すると、どうしても高価格になってしまいます。そこで、戸上にいろいろと頑張ってもらいました」と野村。

戸上の役割は、建築資材や設備類の購買である。125棟というスケールメリットを存分に活かし、各社と価格交渉を行って結果的に分譲価格を抑えることができた。

「『住宅・建築物省CO2先導事業』に採択されたことも、モノを言いました。“先導的な物件に採用された省エネ設備”と、メーカーはアピールできるからです」と戸上は言う。

戸上はさらに、フローリングの端材を活用した壁材の開発を建材メーカーにもちかけて実現させた。

「いい木を使っていたので、捨てるのはもったいないと(笑)。廃物利用で立派な壁材ができて、一挙両得となりましたし、“エコ”の一つの要素になりました」(戸上)

それだけではない。インテリアも兼ねて、桐の収納箱を設置した。軽くて扱いやすい桐には調湿作用もあって、住環境の向上に資する。そして、ポラスの地元・越谷の北に位置する春日部は桐ダンスの名産地である。

「地域密着にこだわるポラスとして、地元の木工所とのコラボも忘れませんでした」と戸上は言う。

HEMS(Home Energy Management System=エネルギー使用状況の“見える化”)ももちろん設置している。

「しかし、得てして使われなくなりがちですので、アフターメンテナンス情報などこちらから役立つ生活サポート情報を発信し、活用を促進していきたいと思っています」(野村)

あえて地中海風のデザインで技術力の高さをアピール

あえて地中海風のデザインで技術力の高さをアピール

ハード面だけではなく、住む人の生活が楽しくなるようなソフトな仕掛けも用意した。この住宅地の1戸あたりの敷地は150㎡超という広さで、庭も大きい。そこで、“food & green”と呼ぶ施策を導入する。庭にブルーベリーなどの実がなる果樹を植栽し、一画には家庭菜園スペースを設けた。水やりに用いるための雨水をためるタンクや、生ごみや落ち葉を堆肥にするためのコンポストも標準装備し、ここでも“ゼロ・エミッション”というエコをもたらしつつ収穫を味わう“家産家消”を実現させたのだ。

「大宮ヴィジョンシティ みはしの杜」の全体的な景観は、あたかも地中海沿岸部の街のよう。ここにも、野村のこだわりが込められている。

「お隣とのコミュニケーションの機会にもなると思います。いろいろな意味で、街や家に潤いをもたらす仕掛けだと自負しています」と野村は言う。住宅地全体は埼玉県の環境住宅賞特別賞を受賞したが、この“food & green”は同じくアイデア賞に輝いている。

「一般的に、エコタウンの家というものはエネルギー効率を重視した箱型の形状が多いが、それではデザイン的に好ましいとは思えません。ポラスグループは元々、地中海風のデザインが得意でもあるので、ならばあえてそのデザインでエコタウンを実現させようと考えました。それが、ポラスグループの技術力の高さをアピールすることにつながると考えたからです。半ば、意地ですね(笑)」

プラスグループの総合力を発揮し、一段上のレベルに

プラスグループの総合力を発揮し、一段上のレベルに

こうして誕生した「大宮ヴィジョンシティ みはしの杜」はマスコミにも取り上げられ、販売も好調に推移している。住宅業界の注目を集め、連日、見学者が絶えない。わざわざ遠方から来る企業も少なくない。

「グループ内でも同様の住宅地を企画するなど、社内外に波及しています。今回も、野田や戸上という素晴らしい人材とともにプラスグループの総合力を発揮し、一段上のレベルに達することができたと思います。そして、戸上がインテリア課に異動したので、次はインテリアとコラボした商品を開発したいと話し合っているところです。楽しみですね」と野村は目を細めて、次を見据えていた。